Tsat (Transferrin saturation:トランスフェリン飽和度) は、血清鉄と、トランスフェリンほか血中の鉄輸送タンパクの比です。どのくらい鉄輸送タンパクの結合部位が飽和しているかの指標であり、鉄欠乏状態では(血清鉄は低下し、鉄輸送タンパクは増加するので)低下します。
Tsat =(血清鉄 ÷ TIBC)× 100
で計算されます。
Tsat の解釈におけるピットフォールとは?
Tsatは比率なので、分子(血清鉄)と分母(TIBC – 鉄輸送タンパク)の変動に影響を受けます。鉄欠乏状態であるのにTsatが偽陰性で上昇するパターンとしては、血清鉄の上昇、TIBCの低下があります。
Tsat(トランスフェリン飽和度)が正確に鉄欠乏を反映しない状態
- 血清鉄の上昇
- 鉄剤摂取、輸血投与
- 溶血
- TIBCの低下
- 炎症(アルブミンと同じくacute phase reactantであり炎症で低下する)
炎症性疾患がある際は、フェリチンもTsatも信頼性は低くなります。鉄欠乏を正確に診断するのは非常に難しいのですが、現実的には鉄補充に反応するかどうかが臨床的に大切になります。
頻度が高くかつ頻繁に見逃されているだろうことを懸念して、慢性心不全・慢性腎臓病・炎症性腸疾患だけを対象に、国際的なエキスパート・オピニオンが2017年に出されています:
- 慢性心不全・慢性腎臓病・炎症性腸疾患においては、血清フェリチン <100 or TSAT <20% をカットオフ値とすることを提唱したい (Am J Hematol. 2017;92:1068–1078.)
カットオフ値を下回った症例では、鉄補充・その後のリアセスメントというアクションに結びつくことになります。