末期腎不全患者ではESR(赤沈・血沈)が上昇しているのがふつう
ときどき、透析患者さんに細菌感染症を疑ってESRが提出されていることがありますが、注意が必要です。骨髄炎のフォローで提出されているのも見たことがありますが、下がりません。
“Erythrocyte sedimentation rate in renal disease”という昔あったはずのUpToDateの章には:
- ESR(赤沈・血沈)はほとんど全ての末期腎不全またはネフローゼ症候群の患者で上昇している
- (末期腎不全患者において)ESR上昇のみでは全身性炎症性疾患(感染症、悪性腫瘍、膠原病)を検索する適応にはならない
とありました。
ESRの解釈については、UpToDateの”Acute phase reactants”という項目によくまとめられています。古典的には、Bathon et al., Am J Kidney Dis. 1987;10:34. がよく引用されます:
- 末期腎不全患者の2/3で ESR >60mm/h
- 20%で ESR >100mm/h
- ESRは透析に影響されない(透析前後で大きく値は変わらない)
なぜCKD・ESRDでESR(赤沈・血沈)が上昇しているのか?
- 貧血の影響は少ないとされる(補正して比較した結果)
- 詳細な原因はまだよくわかっていない
ようです。ネフローゼ症候群では高フィブリノーゲン血症の影響があるはずです。
Take Home Messages
- ネフローゼ症候群・末期腎不全患者ではESR(赤沈・血沈)は上昇していて当然、と思うこと
- ESR上昇のみでは全身性炎症性疾患(感染症、悪性腫瘍、膠原病)を検索する適応にはなりにくい