米国におけるホスピタリスト×感染症のキャリアパスについて、最近のJournal of Hospital Medicineに論考が掲載されていましたので紹介します。
以下のような切り口で論じられています。
- 感染症科医としての専門性が学術活動、臨床、ティーチングを通じてホスピタリストの領域にどのように役立つか
- ホスピタリストにとって、感染症トレーニングによってキャリアのニッチがどのように洗練され得るか
- 米国における感染症×内科入院診療を統合するトレーニング・パスウェイと臨床経験
米国では、ホスピタリストも感染症医も病院からのニーズは高いです。しかし、現在の米国の内科専攻医にとっては、ホスピタリストは比較的人気のキャリアですが、感染症科は長年にわたって人気がありません。
感染症科医が米国の医学生や研修医にとって人気がない理由
以下のような理由が言われています:
- 低い給料(総合内科や他の内科サブスペシャリティに比べて)
- トレーニング中に感染症診療または感染症医と接する機会の減少
- ジョブ・マーケットが限られているかもしれないという不安
彼らにとっては、内科研修だけなら3年で修了後にすぐに指導医としてのサラリーをもらってプライマリケア医やホスピタリストとして働けるのに、その後(感染症フェローシップで)2−3年の追加のトレーニングを受けた挙句にそれより低い給料でより忙しく働く、というのでは割りに合わないわけです。
その一方、感染症のトレーニングを受けた内科医がホスピタリストとして働くことは少なくありません。互いの臨床領域はオーバーラップが大きいので、GIMとしての臨床スキルを維持したいと考えている人がいたり、感染症診療だけでは割り当てられた臨床業務の時間が足りない人(大学病院のClinician-Scientistなど)がアルバイト的にやっていることもあります。
感染症医としての専門性はホスピタリストとしてどう役立つか?
- オーバーラップする研究領域
Hospital MedicineとIDの交差点になるリサーチ領域は沢山あります。入院患者のコモンな細菌感染症に対する抗菌薬治療については、とりわけ研究が盛んです。 - Diagnostic Stewardship
入院患者に対する微生物検査やバイオマーカーの適正使用は、お互いの領域のホットトピックです(例えば、血液培養、尿培養、PCRパネル、CD腸炎の便検査、CRP、プロカルシトニン、など)。 - 医療の質改善・患者安全
感染症トレーニングを受けたホスピタリストは、抗菌薬適正使用や診断スチュワードシップといった医療の質改善や患者安全のプロジェクトをリードする素質を持っています。
ホスピタリスト×感染症医のトレーニング・パスウェイは?
現状、米国では成人を診る感染症内科医は(3年間の内科研修の後に)2−3年のフェローシップ・トレーニングが必要です。ホスピタリストとして最低限機能するための臨床トレーニングは、3年間の内科研修で修了したものとみなされます。その後、一年のうち何週間は感染症診療、何週間はホスピタリスト、などと病院と契約を結んで働くことになります。
実際にホスピタリストと感染症内科医を両立するキャリアを続けていくためには、両方の診療科や病院上層部からのサポートが重要になります。